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Monday, June 27, 2005
シュトックハウゼンとプリゴジンと創世記
シュトックハウゼンは太陽系以上の視点で考えなければいけない芸術家かもしれない。
<東京の夏>音楽祭2005で、伝説の巨匠カールハインツ・シュトックハウゼン氏が28年ぶりに来日。天王洲アートスフィアに4日間通い、毎日コンサートが終わって皆(完ちゃん、中原昌也さん、Buffalo Daughter大野さん、ZAKさん、田中さん、ジュンちゃん、moidsみ!&さ!iamasの皆!!&more)で食事をしながら色々な話をして…終わってしまった今は寂しささえ覚える。
上演内容は、前半は昨年10月にドイツで初演された連作オペラ<リヒト(光)>から「光の日曜日」第三幕<リヒト・ビルダー>。そして後半は<コンタクテ><少年の歌><テレムジーク>等の作品を日替わりでサウンドプロジェクション。初めてのシュトックハウゼンのライブで、過去の代表的な電子音楽作品を作曲家自身がサウンドプロジェクションするまたとない機会に立ち会えて、もちろんそれは凄く嬉しかったけれども、私は<リヒト・ビルダー>が異常に気になる。 体験すればするほど、逸脱した感覚世界へ誘われてゆくイニシエーション。常に新しい作曲の実験を行ってきた 電子音楽の巨匠シュトックハウゼンが 今なぜ、演奏家とソプラノ歌手が摩訶不思議に舞う神話的オペラ形式のオリジナル作品を上演するのか、 この作品について毎日考えていた。
<リヒト・ビルダー>は創世記のごとく月曜日から日曜日までの7つのパートに別れ、 舞台上の4人の演奏者(バセット・ホルン、フルート、トランペット、テノール)は、月=石ー丘ー水、火=木々ー草花ー果実、水=動物、木=7元素、金=天体ー星、土=聖人、日=偏在する神…と人生の7つの領域で神の称えを歌いながら演奏され舞われる。(演奏者は全ての動きと音を暗譜している)演奏者は、水平に、垂直に、斜めに、滑らかに時に大胆に体を動かし場所を移動しながら舞う。それらは全て歌や音楽に関係つけられている。各々のパートが全てポリフォニックで舞台では各々別の演奏時間層・空間層があって、あっているようなズレているような微妙な差異が徐々に広がったり揃ったり、いったいどうなっちゃうのかな?と思っていると、1日の終わり頃に 動き・場所・音の全てが接近してゆき、 メロディが特定の音符のまわりを回るとき、演奏者がいっせいにくるくると輪を描き、ピタッと止まる瞬間があり、次の日が始まる。そして5人目のシンセサイザー演奏者は、見えないところで、サイン波をフルートとトランペットにぶつけ、リングモジュレーションをおこし、音が変調する。<リヒト・ビルダー>スコアの序文のによると「この作品において私は初めて、徐々にひらいてゆく時間感覚のプロセスの中で相手に対して遅延してゆき、やがて再び接近し、最後はシンクロするに至るような音楽的フィギア(かたち)を作曲しました。この遅延は、バセットホルンとフルート、テノールとトランペットのあいだで生じます。両方のペアはともにときおり時間ゼロの地点で出会います。」と語る。
シュトックハウゼンのいう<音楽的フィギア>とは何だろう?妄想かもしれないけど、それは、太陽系…宇宙の持つダイナミズムと秩序がフィギアとなった世界創造の神話なのではないか。 自由論と決定論を併せ持つ宇宙の構造のパターン=音楽的フィギア。<リヒト・ビルダー>はイリヤ・プリゴジンの「散逸構造論」と「創世記」が出会ってしまったような作品のように思える。もし世界の誕生から今までを、カオスの塵から太陽系の誕生まで、そして創世記から現在の私たちの世界形成までのクロニクルをリニアな音楽で表現しようとしたら、時間だけでも40〜50億年(!)あっても足りないだろう。そのようなことを音楽作品で表現しようと試みたとき、<リヒト・ビルダー>のような作品が生まれるのかもしれないと思った。録音された電子音楽作品では「散逸構造論」的な各々の運動のダイナミズムとパターンの軌跡をはっきりと見せることは難しいだろうし、生身の演奏者があのように各々動く必然性も感じられる。カオスの中のゆらぎがポジティブ・フィードバックして自己組織化して秩序あるパターンが創発するときの、その<ゆらぎ>が隠れたシンセサイザーによるリングモジュレーションだとしたら…なんとも、かっこ良すぎるではないか!光源(太陽)=シュトックハウゼンを中心として 、惑星 (回転天体)=音楽家各々がダイナミックに運動しくるくると軌跡を描き運命的に出会いシンクロしてゆく一連の生の運動が、創世記と重なる。現代的な科学理論を神話的に意味付ける、はたまたその逆かもしれないが、一見離れているように思われる時空を超えた鏡の両側の世界を巡り合わせるメッセージなのだろうか。
レクチャーの時の「地球上に私の作品に相応しい場所は存在しない。」との言葉が蘇る。 でも空気がないと音楽も聞こえないだろうし、 もしエイリアンが地球を訪れたなら、この作品を総上演(7日間29時間)してほしいものだ。そしてできることならそれを観たい。
何はともあれ 彼の人の今の作品に今触れることができて至福の四日間だった。そしてサインまで頂いてしまった。心から感謝します。
June 27, 2005 at 12:05 AM in アート・音楽・映像 | Permalink
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